ビートルズ(The Beatles)がロックの歴史を塗り変えたことに、
だれも異論はないと思います。
そんな彼らの1965年から始まる「中期」の作品群で、
一際光輝くアルバム。それがビートルズ7枚目のアルバム
です。
この作品の何が革新的だったのか。
ポイントは
①サイケデリック感(日常では得られない感覚)たっぷりのサウンド
②曲が書けなくなっていくジョン、台頭するポールとジョージ
です。
では一つ一つ見ていきましょう。
Revolver とは?
リリース:1966年8月5日
録音:1966年4月6日から6月21日
カバーアート:クラウス・フォアマンによるもの。メンバーの似顔絵に写真を切りして作成されました。
3か月の休暇。そして天才ジェフ・エメリックの参加。
解説:前作「Rubber Soul」とシングル「We Can Work It Out/Day Tripper」が、1965年12月3日に同時リリースされました。その後、1963年から1965年までの流れと同じように、ビートルズの主演映画、それのサウンド・トラック、それに続く夏のコンサートをマネージャーのブライアン・エプスタインは考えていましたが、バンドはそれを拒否します。そのまま1966年1月から3月までメンバーは休暇に入ります。
1966年4月から本作のレコーディング・セッションが開始。この作品からレコーディング・エンジニアにジェフ・エメリックが参加します。各曲共にコンサートでは再現不可能なものが多く、「Revolber」発売後に「Revolber」収録曲がコンサートで演奏されることはありませんでした。つまり、彼らがライヴ・バンドからレコーディング・バンドへと変身を遂げた作品と言えます。
大名曲「Rain」ですら漏れてしまう楽曲のクオリティー
このセッション中に「Paperback Writer」と「Rain」二枚のシングルも録音されていますが、アルバムからは漏れています。共にビートルズを代表するような名曲ですが、他の作品との並びを考慮したときにそぐわなかったのかもしれません。恐るべきイマジネーションが次々とバンドに降りかかっていたことがうかがい知れます。
収録曲
①Taxman
ジョージの曲。題名の通り高すぎる税金を皮肉る歌詞です。ギターソロはポールが担当しています。
②Eleanor Rigby
ポールの曲。大々的にストリングスがフューチャーされちます。ポールのリード・ボーカルにジョンとジョージのコーラスが入り、リンゴは参加していません。楽曲の世界観を優先している彼ららしいエピソードです。
③I'm Only Sleeping
ジョンの作品。この時期の作品には録音テープの逆回転音が多く使用されており、これもその一つ。間奏はジョージが弾いたもの。このころにジョンが覚えた「LSD」の影響が色濃く出ていて、気怠いサイケ感を誘っています。
④Love You To
ジョージの作品。前作で出てきたシタール以外にもタブラや、インド式ハーモニウムなどインド楽器が多く使用されています。こんなサウンドのポップソングは他には存在しませんね。
⑤Here,There And Everywhere
ポールの作品。アルバムの流れ上、非常にとがった曲が続いた後でこの三声コーラスが聴こえるととても落ち着きます。前年にリリースされていたビーチ・ボーイズの「God Only Knows」に影響を受けて書かれたとのこと。どちらも負けず劣らず美しい名曲です。
⑥Yellow Submarine
ジョンとポールの共作で子供向けのナンセンスソングとして書かれました。ボーカルはリンゴ。1968年にはこの曲を題材としてアニメ映画が公開されました。アルバム前半の非常にサイケな雰囲気の中で、突如現れるシンプルなメロディーが逆にビートルズの「余裕」を感じさせます。
⑦She Said,She Said
ジョンの作品。強烈なLSD体験が歌詞のモチーフとなっています。曲の途中で変拍子になり、また戻ってくるという複雑な構成を持った曲です。セッションの途中で口論となり、ポールが帰ってしまったことから、ポールが参加していな唯一のビートルズ・ナンバーとなっています。
⑧Good Day Sunshine
ポールの曲。ヴォードヴィル調の楽曲。ピアノソロはジョージ・マーティンが弾いています。
⑨And Your Bird Can Sing
ジョンの曲。冒頭からのギターはポールとジョージが弾いています。めちゃくちゃかっこいいです。今日のギターポップサウンドの雛型と言えるような曲。
⑩For No Man
ポールの作品で、失恋した男がテーマとなっています。アラン・シヴィルが吹くフレンチ・ホルンソロが曲の世界観にマッチしています。非常に洗練されたメロディーで、とても評価の高い曲ですが、ジョンとジョージは参加していません。
⑪Doctor Robert
ジョンの曲で、「スピード・ドクター」と呼ばれたロバート・フライマン医師について歌われています。つまり、ちょっと危ない人の歌ですね。レスリースピーカーを通したリードギター(ジェフ・エメリックのアイディア)など変わった音が入っています。
⑫I Want To Tell You
ジョージの曲。一つのアルバムにジョージの曲が3曲入ったのはこの「Revolver」が初めてです。やはりLSD体験を歌った作品となっています。
⑬Got To Get You Into My Life
ポールの作品。バンドサウンド以外に初めてホーン・セクションがフューチャーされていて、非常ににぎやかな曲。ポールはマリファナに影響を受けて書いた曲と話しています。
⑭Tomorrow Never Knows
テープを切り貼りしてループされることで得られる独特なサウンドが耳をひく、かつてないまでにトリッピーな曲。タイトルの由来はリンゴの言い間違いからとられています。そのテープループの手法は、後のヒップホップで使用されるサンプリングのそれと全く同じ構図であり、この1966年という段階で、その気持ちよさに気が付いていた彼らのセンスには驚かされます。ジョンのボーカルは「ダライ・ラマが山の頂上から説法しているような感じで」というオーダーに、ジェフ・エメリックが見事にこたえています。
「Revolver」まとめ
以上、ビートルズ7枚目のアルバム「Revolver」の解説でした。
①サイケデリック感(日常では得られない感覚)たっぷりのサウンド
②曲が書けなくなっていくジョン、台頭するポールとジョージ
この2点を感じながら、この歴史的名盤を味わってみてはいかがでしょうか。
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