「レット・イット・ビー...ネイキッド」に託されたポール・マッカートニー積年の願い。なぜ同じアルバムが2枚あるのか。

「レット・イット・ビー…ネイキッド(Let It Be...Naked)」とは?

レット・イット・ビー・ネイキッド

概要

発売日:2003年11月17日

録音時期:1968年2月4日、1969年1月2日から1月31日、1970年1月3日

解説

バンドの想いと矛盾

1970年5月にリリースされたアルバム「Let It Be」は、

1969年1月からの「ゲット・バック・セッション」をフィル・スペクターがオーバーダビングを施して完成させたものでした。

ここには3つの思惑が交差していました。

①契約義務もあるし、なんとしても音源をアルバムとして完成させたい

→映画「Let It Be」の公開も控えており、そのサウンドトラックも担っていました。

②これまでのディスコグラフィと遜色ない作品でなければならない

→ライバル的存在であるイギリス出身のバンド、ローリング・ストーンズやザ・フーも力を見せ始め、もはやビートルズは一強のバンドではなくなっていました。

そんな劣勢の中、ビートルズの価値を下げるような作品を出すことは決してできませんでした。

③「バンドとして原点に戻りたい。オーバーダビングは避けたい」

→デビューから彼らを支えたマネージャー、ブライアン・エプスタインを1967年に亡くして以降、

メンバーの心は取りまとめ役を失い離れ離れになっていきました。

そんな状態にポール・マッカートニーは危機感を感じ、

デビューしたころのサウンドに戻ろうと考えました。

以上の3点、①契約義務 ②恥ずかしくない作品 ③ダビングは避けたい 

がバンドの共通認識でしたが、肝心の音源は

どう頑張ってもこれまでの水準を超える・もしくは満たすものではなかったのです。

つまり③ダビングは避けたいを守ろうとすると、

②恥ずかしくない作品にはならず、

①契約義務も果たせない。

という矛盾が生じていたのです。

忘れられていた、映画のサウンドトラックとしての機能

ポール・マッカートニーの意に反し、

ジョン・レノンとジョージ・ハリスンはフィル・スペクターに「ゲット・バック・セッション」の音源を渡します。

フィル・スペクターはオーケストラやコーラスなどのオーバーダビングを行い(スタジオにはリンゴ・スターも招かれました)、

ジョンとジョージはその仕上がりに満足します。

急にその話を聞いたポールは発売差し止めを求めますが、契約義務であったこともあり

アルバム「Let It Be」は1970年5月8日に発売されました。

しかし、ここでも問題がありました。

1970年5月8日公開の映画「Let It Be」のサウンド・トラックとしての役目を果たしていなかったのです。

アルバム12曲中5曲が映画とは違う音源で収録されていたからです。

このことにずっと不満を持っていたポールは、トラックダウンからやり直し、映画の中で聴ける音になるべく近い形で再リリースすることを計画し、リンゴとジョージ、またヨーコを説得します。

ジョージはその後2001年に亡くなってしまいますが、この音源は2003年11月に「レット・イット・ビー...ネイキッド」という名前でリリースされたのでした。

収録曲

①Get Back

②Dig A Pony

③For You Blue

④The Long And Winding Road

⑤Two Of Us

⑥I've Got A Feeling

⑦One After 909

⑧Don't Let Me Down

⑨I Me Mine

⑩Across The Universe

⑪Let It Be

まとめ「レット・イット・ビー…ネイキッド(Let It Be...Naked)」

フィル・スペクター盤「レット・イット・ビー」は1970年発売、

それから実に33年の月日が流れて「ネイキッド」はリリースされました。

フィル・スペクター盤が悪いわけでは決してありませんが、

「ネイキッド」で聴ける生のビートルズ・サウンドはとても瑞々しく、

ありのままで発売したいと願ったポール・マッカートニーの気持ちもよく分かります。

通常盤と「ネイキッド」盤。是非、二枚の「レット・イット・ビー」を聴いて楽しんでいただければと思います!

レット・イット・ビー・ネイキッド

おすすめの記事