前作「A Hard Day's Night」で遂に全曲オリジナルソングに踏み切ったビートルズ(The Beatles)。
そのリリースからわずか5か月足らずで次のアルバムは発売されました。
それがこの
です。
あまり語られることのないどちらかというと地味な作品ですが、根強いファンも多い名作です。
誰もが知っている曲というと「Eight Days A Week」ぐらいしか入っていないのですが、
今も聴き続けられる理由とはどこにあるのでしょうか。それは、
①素晴らしすぎるオープナー3曲
②「Mr.Moonlight」におけるジョンの歌唱の素晴らしさ
です。まぁ、とにかくA面が良いんですよね。
Beatles For Sale とは?
リリース:1964年12月4日
録音:1964年8月11日-8月14日/9月29日-10月26日
アートワーク:ロンドン・ハイドパークで撮影されました。
多忙を極めていたビートルズは大ヒットした前作から続く大事な4枚目のアルバムをたった3週間で仕上げてしまいます。クリスマスに間に合わせる必要があったため、オリジナル曲が足りなかった彼らは再びカバー曲を録音します(14曲中6曲がカバー曲で「Please Please Me」「With The Beatles」と同じ構成)。
時間がなくとも冴えわたるソングライター達
無理なスケジューリングながらバンドは8曲の書下ろしを提供しており、特にA面の冒頭3曲(①「No Replay」、②「I'm A Loser」、③「Baby's In Black」)はジョンのソングライティングがピークを迎えていたことを知らせる圧倒的なクオリティーです。
収録曲
①No Replay
ジョンの作品。別の歌手の為に書かれた曲でしたが、なぜか採用されずジョンが歌っています。いやぁ、よかった。彼女に居留守をつかわれた男の恨み節たっぷりの失恋ソング。恨み節といえばジョン・レノン。右に出る人は居ません。
②I'm A Loser
ジョンの作品。ボブ・ディラン(この頃、ビートルズに薬物を教えたとされています)を意識して作られました。ジョンによるハーモニカソロもかっこいいですね。
③Baby's In Black
ジョンとポールの共作。一つのマイクに向かってレコーディングされたという二人のコーラスが美しい傑作です。葬式で黒装束に包まれた彼女をみてどうすればいいかわからないと歌っています。これもガールズグループからの影響が強くうかがえる楽曲です。
④Rock And Roll Music
言わずと知れたチャックベリーのクラシック・ソング。ちょっと舌足らずなジョンのボーカルがキュートかつワイルドです。
⑤I'll Follow The Sun
ポールによるフォーク調の歌です。なんと16歳で書いた曲だそう。天才は早熟ですね。こういった小作品でも、いちいち気が利いているのがポールの持ち味です。
⑥Mr.Moonlight
1stにおける「Twist And Shout」、2ndでの「Please Mr.Postman」に続くジョンの素晴らしいボーカルが楽しめるカバー曲。手の届かない誰かを狂おしい叫びで求愛し、クールなコーラスが彩を添えていく。ビートルズの十八番です。ポールの弾くハモンドオルガンもいい味を出しています。
⑦Kansas City/Hey Hey Hey
カバー曲。ボーカルはポール。
⑧Eight Days A Week
ポールのアイデアを基にジョンと共作された曲。add9コードを多用したイントロから印象的。ビートルズが初めてフェード・イン(少しずつ音量が上がっていく入り方)を導入した曲。非常にポップでファンには人気の曲ですが、なぜかバンドはよく思っていなかったらしくライブではほとんど演奏されていません。
⑨Words Of Love
ジョンが大ファンだったバディ・ホリーのカバー。ボーカルはもちろんジョン。ジョンとジョージのギターも素晴らしいコンビネーションです。
⑩Honey Don't
カール・パーキンンスのカバー。ボーカルはリンゴ。それまでのライブではジョンが歌っていたのですが、アルバムのバランスをとる為リンゴが歌うことになりました。
⑪Every Little Thing
ポールの曲ですがボーカルはジョンという珍しい曲です。ジョンのハスキーな声とポールの綺麗な高温コーラスがよく似合っています。
⑫I Don't Want To Spoil A Party
ジョンの曲。ジョンのメインボーカルの下を行くメロディで、誰がハーモニーパートを担当したか未だに分かっていません。忙しすぎですね。私はジョンのダビングだと思います。
⑬What You're Doing
ポールの曲。珍しくドラムソロで始まります。ここに重なってくるジョージのギターはどこか「Ticket To Ride」を彷彿とさせます。
⑭Everybody's Trying To Be My Baby
「Honey Don't」と同じくカール・パーキンンスのカバー。ボーカルはジョージ・ハリスンが担当しています。
総評
あまりに素晴らしすぎる前半に比べると後半でやや息切れしてくる印象はぬぐえません。それでも様々なサウンドやコーラスワークにトライしている4人の姿が浮かんできます。クリスマス商戦に合わせて制作されたいささかラフなアルバムですが、ここからビートルズは少しずつレコーディング・アーティストに変わっていくターニングポイント的な作品でもあるのです。
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